信託の目的

 民事信託(除く商事信託)は、根拠法である信託法において、相当自由に内容を定める事が認められています。従って、お客様の目的に従い、
財産の管理・活用・承継の各側面において、何時、誰に、何を、どのようにするかを分類・整理して効果的な信託を設計する必要があります。
いわば「カスタムオーダーメイド」の契約書作成と言えます。ここでは目的別信託のご参考として、幾つかの事例の一部をご紹介します。
民事信託活用の具体的場面例をお示しいたします。ここをクリックしてください。
 (なお以下の記述は、当事務所所長が遠藤英嗣弁護士のご講義から得た情報及び、遠藤英嗣先生のご著書(「新訂 新しい家族信託」遠藤英嗣著
 日本加除出版 平成29年)からの情報を参考にさせていただきました。) 


 遺言信託

  民事信託において「遺言信託」とは「遺言による信託」の意味です。遺言信託は、遺言により受託者を定め、信託を行う遺言制度による仕組みです。
当然遺言が無効にならないよう遺言に関する規定を守る必要があります。
(なお、金融機関が宣伝する「遺言信託」は、当事務所が知る限り、遺言書作成のアドバイス、遺言書の保管、遺言執行をいわばパッケージにした商品の
名前であり、民事信託に言う「遺言信託」とは別物です。)

遺言者である夫が、子を受託者とし、認知症の妻を受益者に設定して資産を信託する。
遺言者である夫が、前婚の子を受託者とし、後妻に自宅を生涯住まわせ、後妻死亡後には子と孫に相続させる。
遺言者である母が、親族を受託者とし、障害を持つ子を受益者に設定し、受益者代理人に専門職を専任し、子の死亡後は、残余財産を他の親族及び子が
世話になった法人に贈与する。(親亡き後支援信託)


 遺言代用信託

父子家庭において父が委託者となり、親族を受託者とし、父の存命中は父を受益者とし、父の死後は子を受益者とする。残余財産は親族等に贈与する。
(遺言をするのではなく、委託者の死亡であたかも遺言と同様の効果を生む信託です。)


 任意後見支援型信託

任意後見契約を締結した委託者が、後見における身上監護に適さない、高級住宅の自宅、所有賃貸マンション、高額金融資産、株式を別途財産とし、
法人を受託者とし、委託者を受益者とする。


  遠藤英嗣弁護士は、ご著書「新訂 新しい家族信託」において信託を活用できる目的別類型を示しておられます。福祉型信託として整理しておられる
名称のみ列記させていただきますので、詳細は「新訂 新しい家族信託」をご覧いただければ幸いです。


福祉型信託
高齢者福祉型信託

障害者福祉型信託(親なき後支援信託)

福祉後見支援信託

受益者複数家族信託

未成年者養護信託

配偶者支援型家産承継信託

相続対策・受益権複層化型信託

相続対策・家督承継型信託

死後事務委任型信託(祭祀財産管理型信託)

「空き家問題」解決支援信託


民事信託活用の具体的場面例をお示しいたします。

 お客様ご自身の老後対策としても民事信託制度の利用が有効です。誰しもが高齢となり物忘れがひどくなります。自覚されたときは対応策を
作るため、素早い意思(何をどうしたいかの具体化。)の確定が肝要です。
大切な不動産や預金、株式などの財産をお子様などに「引き継がせたい」
「安心した生活を保障してあげたい」とお考えのとき、相続を念頭に財産承継の仕組みを信託制度により行うことで、次のようなご心配にお応え
できます。


  子どもに財産を引き継ぐにしても、財産の使い途は、教育や医療のために限定したい。遊興費などに無駄遣いをできないようにしたい。
 (財産活用の制限)


  未成年の子ども、知的障害者の方・高次脳機能障害者の方など障碍をお持ちの方々、認知症を持つ高齢者の方など、財産を管理する法的能力が
 ない(または失われた)とき、「親亡き後」「夫(妻)亡き後」などの対策を実現したい。


  財産を引き継いだ子どもが先に亡くなったとき、財産は子どもの配偶者に相続される。財産、殊に株式などが散逸することを防ぎたい。
 第一次相続人以降の相続人を決めておきたい。(第二次相続人の順位決定)


  自分の死後は子ども夫婦が財産を引き継ぐのは良い。しかし残された妻(夫)の安泰な老後生活保証が心配であるので、確実な準備をして
 おきたい。

  財産は一度に引き継ぐのではなく、毎年一定額を渡したい。


  ★ 子どもが未熟であると思われる間は、贈与した財産や株式を引き続き自分が管理し、経営権を保持し、自分の死後は成長した子どもに管理や
 事業運営を委ねたい。


 お客様ご自身の老後対策としても民事信託制度の利用が有効です。誰しもが高齢となり物忘れがひどくなります。自覚されたときは 対応策を
 作るため、素早い意思(何をどうしたいかの具体化。)の確定が肝要です。契約時点から直ちに効力を生ずる信託制度の活用が、お考えの実現を
 確実にいたします。(ご自身の判断能力低下と介護への備えとしての後見的財産管理機能。)


  ご自身の老後生活のありかたと、それを支える介護費用などにご自身の財産を活用する、施設入所の費用にあてる、必要に応じて自宅不動産を
 処分する、などと定めた信託契約が役立ちます。認知症になっても契約締結時点から直ちに契約内容の効果が生じ、自分の財産を自分のために活用
 できる民事信託制度の活用が緊急の対応として必要です。(後見代用信託)


  お客様がお元気であったときのお考えである、贈与や積極的財産活用(投資、経営への参画)の実現は、認知症が進んでしまえば成年後見制度
 でも対応できません。お元気なうちにお客様の思いやお考えを具体的に反映した民事信託契約により受託者を通じて実現 することが最適な方策です。


 認知症が進行してしまいますと、任意後見契約の発効(詳細はこちらをクリック)や申し立てによる法定後見の開始(詳細はこちらをクリック)により、
 法律行為(売買、賃貸借、お金の借り入れなどの契約、贈与や遺言など)がお一人ではできなくなってしまいます。


  家庭裁判所で選任される成年後見人は、被後見人の財産管理と身上監護(被後見人の生活全般を契約の代理締結などによってトータルに支援する。)
 役割を担います。しかし、財産の管理・活用面では、施設利用料や医療機関への治療費支出など、被後見人の財産が不当に減少しないように「守る」
 財産保全行為に限られます。

 お客様の死後、ペットは相続人になれませんので、残されたペットは、相続人やほかの方などどなたかに世話をお願いすることとなります。
 しかし本当に世話を続けてくれるのか、相続財産がペットの飼育費だけに使われるかのご心配が残ると思います。

 そこで、大切にしていたペットがこれまでと変わらぬ生活を確実に送れるようペットの飼育を目的とした財産活用については、信託を設定し、
 お客様亡きあとや、お客様の施設入所のときなどを条件として、信託監督人の下で安心を確保することが可能になります。


  お客様の財産は、ペットを飼育するためだけに使用することが確実に実現できます。現在は受益者(ペットは受益者にはなれませんので。)の
 無い信託は、「目的信託」とも呼ばれ、個人が受託者になれません。信託契約の相手方となる「受託者」としてお委せできるのは、当分の間政令で
定める法人に限られています。信託の存続期間は20年を超えることはできません。


  しかし、ペットに関する信託の扱いは、税負担の視点から注意が必要です。いわゆる目的信託構成をとるか、それ以外にペットの所有者変更を
 踏まえた信託構成とするか注意が必要です。具体的費用については、税負担も含め慎重な検討が必要です。

任意後見制度

 任意後見制度は、自分が判断能力不十分の状態になった場合に備え、あらかじめ自分が選んだ「任意後見人」と呼ばれる代理人に、自分の生活、療養看護、
財産管理などに関する事務の代理権限を与える任意後見契約を公正証書をもって結んでおくものです。


 本人の判断能力が低下したときに、任意後見人は、任意後見契約で取り決めた事務について、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督の下で本人を
代理して医療機関や福祉サービス事業者などとの契約を行い、本人の意思に従った適切な支援や保護を実現する制度です。


 メリットは、公証人への相談により短時間で契約が可能で簡単に利用ができること。会社の役員、医師等の資格、印鑑登録が無効にならないこと。
見守り、死後事務委託、財産管理信託、尊厳死など終末医療での意思表示など幅広い対応が可能です。

 任意後見制度について詳しくは日本公証人連合会のページをご参照ください。http://www.koshonin.gr.jp/business/b02 

法定後見制度

 法定後見制度は、任意後見契約(登記)が無い場合に、医師の診断書を添えて家庭裁判所へ申し立てを行い、家庭裁判所が直接関与し、審判によって後見、
補佐、補助という三類型に対応する、後見人、保佐人、補助人を選任し、それぞれについて取消権、同意権(補佐・補助のみ)、財産管理権(後見人のみ)を
付与する法の仕組みです。


 被後見人に登記されますと、多くの資格制限があり、会社の役員、医師等の資格を失います。印鑑登録は無効になります。遺言もできなくなります。
更に詳しくは法務省のページをご参照ください。
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html 

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